確定申告と聞くと、ちょっと身構える方は多いと思います。「面倒そう」「難しそう」「できれば見たくない」。このあたりの気持ちは、私も同じように感じるのでよく分かります。
ただ、私の場合は少し変わっているかもしれませんが、会計データの入力はそこまで苦ではありません。むしろ、売上や経費を仕訳していく作業は、わりと好きです。独立してからは弥生会計を使って自分で入力し、そのまま青色申告まで一人で進めています。
簿記の資格を持っていることもあり、仕訳そのものに強いストレスはありません。もちろん、確定申告の時期になると「またあの季節が来たか」と少し気分が沈みますが、少なくとも“やってられない”と投げ出すようなものではない、くらいの感覚です。
この記事では、そんな個人事業のWebデザイナー目線で、自分で確定申告をやるメリットとデメリットをまとめようと思います。「税理士さんに全部お願いするほどの規模ではない」「でも、適当にやるのは不安」という方に参考になれば幸いです。
こんな人に向いている記事です
- 個人事業のWebデザイナー・Web制作者として活動している
- 会計ソフトを使って自分で青色申告している、または検討している
- 売上はそこまで大きくないが、お金の流れは自分で把握したい
- 確定申告を“ただの義務”ではなく、事業の見直しに使いたい
青色申告は、やはり個人事業にとって強いです
制度面をある程度理解できると、青色申告はやはり個人事業と相性がいいと感じます。正規の簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添えて期限内に申告すると、青色申告特別控除は原則55万円。さらに、e-Taxによる電子申告、または一定要件を満たす優良な電子帳簿保存を行うと、最高65万円の控除が受けられます。赤字が出た場合の純損失の繰越しも、青色申告の大きなメリットです。
青色申告承認申請書は、原則としてその年の3月15日までに提出。新たに開業した場合は開業日から2か月以内が目安となります。帳簿や決算関係書類の保存期間は原則7年間、請求書や見積書など一部書類は5年間の保存が必要です。
また、e-Taxは自宅からスマホやパソコン、マイナンバーカードを使って申告できるようになっていて、いまは「会場に行かないと無理」という時代でもありません。私も今はネットですべて完結させています。
これらを踏まえると、「小規模だから白色でいいや」より、「自分で回せるなら青色で申告」の方が、個人事業のWeb制作者にはかなり相性がいいと感じます。
自分で確定申告するメリット1:お金の流れがかなり見える

いちばん大きいのは、やはりこれだと思います。売上がどこから入り、何にお金が出ていっているのかが、自分の手で分かります。これは想像以上に大きいです。
たとえばWeb制作の仕事だと、
- サーバー代
- ドメイン代
- Adobe関連アプリ等のサブスク
- フォントや素材サイトの利用料
- WordPressの有料テーマやプラグイン
- 書籍代、講座代
- PCや周辺機器
- 打ち合わせ交通費
- 外注費
このあたりが毎年じわじわと積み上がっていきます。
入力を自分でやっていると、「思っていたより固定費があるな」とか、「このサービス、毎月払ってるのにほぼ使っていないな」とか、そういうことが嫌でも見えてきます。つまり確定申告のための入力でありながら、実際には経営の棚卸しにもなっているわけです。
もちろん、税理士さんに依頼する場合でも数字は把握できますが、自分の手で入力するほうが、どうしても解像度は上がります。この“身近に数字がある感覚”は、個人事業ではかなり大事だと思っています。
自分で確定申告するメリット2:節税の仕組みを理解して使える
節税という言葉を聞くと少し気が引ける方もいるかもしれませんが、実際には「制度を理解して、ちゃんと使う」という話だと思います。
青色申告は、複式簿記や期限内申告など一定の手間がある代わりに、控除や赤字の繰越しなど、個人事業にとって分かりやすい利点があります。特に、売上の波が出やすいフリーランスや小規模事業では、前年・今年・来年をつなげて見られるのが強みです。
自分で入力していると、「この出費は何のためのものか」「売上との関係はどうか」を考えるので、経費や利益の感覚がだんだん育っていきます。
単に“税金を減らしたい”ではなく、事業としてどう整えるかの視点が持てるようになります。
Webデザインの仕事は、在庫を大量に抱える商売ではないので、数字が比較的シンプルな部類に入ります。そのぶん、自分で見たほうが全体を把握しやすい業種だと感じます。
自分で確定申告するメリット3:見積りと単価の精度が上がる
これはWeb制作者にかなり大きいメリットです。
申告を自分でやっていると、年間でどれくらい固定費があり、どれくらい利益を残したいかが見えてきます。すると、見積りや単価の感覚も変わってきます。
たとえば以前の私は、「この規模ならこのくらいかな」と、何となく感覚で料金を決めることもありました。
でも会計を自分で見るようになると、
- その案件に何時間かかるか
- 外注の可能性があるか
- 修正対応の負荷はどれくらいか
- その月の売上バランスはどうか
このあたりを、以前より現実的に考えるようになります。
要は、確定申告は単なる年1回のイベントではなく、単価設計の基にもなり得ると強く感じます。数字が見えると、「安く受けすぎてしまった」が減ります。これはかなり助かります。
自分で確定申告するメリット4:事業と私生活を分ける意識が強くなる
個人事業、特に一人で営業していると、仕事と私生活の境目が曖昧になりがちです。
- 自宅兼事務所
- 私物のPCと仕事用PCが混ざる
- サブスクが多くて用途が混在しやすい
こういう状態だと、日常の支出と事業の支出が自然に混ざります。自分で会計入力をしていると、この“混ざりやすさ”を毎回目にするので、自然と整理するようになってきます。これは地味ですが、大きい変化です。入力の際は摘要を入れる、請求書や領収書を適切に保存しておく。こうした基本動作が身についてくると、あとで自分がかなり楽になります。
自分で確定申告するメリット5:数字に対する苦手意識が減る
個人事業を始めたばかりの頃は、「税金」「会計」「申告」と聞くだけで、なんとなく重たいものに感じやすいです。
でも、一度自分で一通りやると、意外と見える景色が変わります。
もちろん、全部が簡単になるわけではありません。ただ少なくとも、「分からないから怖い」状態から、「手順は分かる。あとは確認しながら進めればいい」状態にはなりやすいです。この差は大きく、毎年の作業がゼロになるわけではないですが、精神的なハードルはかなり下がります。
ではデメリットは? 自分で確定申告するしんどさ

ここまでメリットを並べましたが、当然デメリットもあります。
というより、向いていない人にとっては普通にしんどいです。
デメリット1:締切が近づくと、やはり落ち着かない
どれだけ普段から入力していても、申告期限が近づくと独特の圧はあります。
「未処理の仕訳はないかな」
「この経費の扱い、これでいいのかな」
「控除関係、漏れてないかな」
このへんは毎年ゼロにはなりません。確定申告には締切がある以上、最後はやはり時間との戦いで、時計とカレンダーとのにらめっこになります。自分でやる以上、気楽だけど完全にノーストレスではありません。ここは正直に言っておきたいところです。
デメリット2:本業が忙しい時ほど、後回しにしやすい
Web制作の繁忙期と、経理の理想的なタイミングは、だいたい一致しません。案件が立て込んでいると、どうしても
「領収書はあとでまとめよう」
「口座の確認は来週でいいか」
となります。
そして、その“あとで”が積み重なると、年明けに自分を苦しめます(私は毎年そうです笑)。
これは本当にあるあるです。会計入力が嫌いじゃない私でも、忙しい時期は普通に遅れます。だからこそ、自分でやるなら月1回でもいいから触る仕組みを作ったほうがいいです。
デメリット3:規模が大きくなると、一人で回すコスパが落ちる
小規模な個人事業なら、自分で回すメリットは大きいです。ただ、売上規模が大きくなったり、外注が増えたり、取引が複雑になったりすると、話は少し変わってきます。
数字を把握すること自体は大事でも、
「入力や確認にかかる時間を、本業や営業に使ったほうがいい」
という段階は、確かにあります。
自分でやるか、人に任せるかは、能力の問題というより事業フェーズの問題でもあります。ここは無理に“全部自分で”にこだわらなくていいと思います。
デメリット4:間違えたとき、自分で気づく必要がある
申告内容に誤りがあった場合は、修正申告や更正の請求といった手続で直すことになります。つまり、自分でやる場合は「どこが違ったか」に自分で気づく必要があります。
これは当たり前ですが、地味にプレッシャーです。誰かがダブルチェックしてくれる体制ではないので、最後は自分で確認しないといけません。
だから私は、「完璧にやる」より「普段から整理して、年度末に慌てない」を優先したほうが現実的だと思っています。ただし、頭ではわかっていても実際にやるのは非常に困難です笑。
個人事業のWebデザイナーは、自分で申告する価値があるのか
私の答えは、一定条件なら、かなりあるです。特に向いているのは、こんなタイプではないでしょうか。
- 売上や経費の流れを自分で把握したい
- 取引件数がまだそこまで多くない
- 会計ソフトに抵抗がない
- 数字を見るのがそこまで苦ではない
- 単価や利益感覚を育てたい
逆に、次のタイプは無理をしなくてもいいと思います。
- そもそも数字を見るだけで強いストレスがある
- 領収書整理の時点で止まる
- 案件数や取引量が多く、処理が複雑
- 本業の時間単価が高く、経理を任せた方が合理的
自分でやることが偉いわけではありません。ただ、小規模な個人事業のWeb制作者にとっては、自分で申告を回す経験そのものが、経営感覚を育てる訓練になるとは強く感じています。
まとめ:確定申告は「面倒な年中行事」だけではない

確定申告は、たしかに面倒です。締切もありますし、確認作業も必要ですし、完全に気楽な仕事ではありません。それでも、自分で会計入力をして青色申告まで通すと、見えてくるものがあります。
- お金の流れ
- 利益の残り方
- 固定費の重さ
- 単価の妥当性
- 事業と私生活の境界線
このあたりが見えるようになると、確定申告は単なる義務ではなくなってきます。少なくとも私にとっては、事業を整えるための定点観測に近いです。会計ソフトに入力しながら、売上や経費を一つずつ見ていく。地味な作業ですが、個人事業のWebデザイナーには、この地味さが意外と効きます。「確定申告が好きです」とまでは言わなくても、「自分の事業をちゃんと把握する時間」と思えるようになると、少しだけ気が楽になります。
制度は毎年見直しが入ることもあるので、公開時点では国税庁の最新情報もあわせて確認しておくと安心です。
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/



